【好きだから別れて】
悠希の運転であたしと唯は店の前ではなく、アパート付近まで送ってもらった。


下に貸し店舗が数件あり、訳ありの飲み屋関係の人が住む特殊なアパートはデカデカと場所を陣取り、車が入るには細道で通りにくい。


酔っ払いのおっさんが自転車でふらつき、停車していたあたしの車に突っ込んできたくらいの狭さだ。


そこにギリギリ車を停車させ、四人は最後の挨拶をかわした。


「今日はありがとうねん。またみんなで遊ぼうな」


「おうよ。またメールすっから」


「うん。わぁった。二人とも気をつけて帰れよ。ねぇ悠希君。飲酒なんだから事故らずにね」


「あはっ。大丈夫!酔い覚めてきたしさ。んじゃまた」


「あいよ。唯行くか」


二人の顔を交互に見て手を振り、唯と車を降りる。


「またな!唯ちゃんバイバーイ!」


慶太は機嫌良く窓から手を振り、悠希はあたしと唯に軽く会釈して車を走らせた。


悠希の車が徐々に視界から遠退き消えていく。


その後、唯とあたしはエレベーターに乗り自分の部屋へ各自帰った。


結果良ければ全て良し。


終わり良ければ全て良し。


かもしれないが、ただ一つ。


あたしは痛恨のミスをおかしている。


大事な大事な問題。


それは慶太を取り戻す必須アイテム“悠希のアドレス”


彼のアドレスを聞けず仕舞いでぬけぬけと帰ってしまった。


心残りを嘆いても


もうどうしようもない。


心残りを一人悔やんだ…
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