【好きだから別れて】
あたしはバッグからポラロイドカメラを取り出し、目の前に構え


「記念ですから!ハイピース」


掛け声をかけ、満更でもない二人は肩を組みピースしていい顔で笑っていた。


笑いを堪えきれず肩を震わせシャッターをきり、たくさんの笑顔が映る写真は出来上がっていく。


ここはあたしのオアシスだな。全然寂しくなんてない。心から楽しいもん


気の合う仲間が集う、最高の場所で最高の時を過ごす。


こんなに幸せな時を過ごせ、酔っ払っていても本当に幸せ者だと痛感していた。


みんな酒好きの集まりで、一気飲みが当たり前のこの場所は酒が常備してあり、飲む量も尋常じゃない。


みんな顔を赤らめてはいるもののさすが強者共の集まりで、誰一人飲むのを止める気配を見せない。


飲み屋をしているあたしでさえ着いていけない威勢のいい飲みっぷりだ。


色んな種類の酒が胃の中でミックスされ、空きっ腹には大ダメージ。


ちゃんと食べ物を口に入れておけばいいのに、あたしは酒だけを口にしていたせいで見事に決まってしまった。


「もうギブゥ…」


そう言ったのは覚えている。


が、そこからの記憶は綺麗にぷつりと途絶えた。
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