雨に似ている

息抜きに

詩月は学校帰りに、必ず岩舘病院に寄る。

彼は毎日診察を待つ間、楽譜に目を通す。


「なんだ！　また上手く弾けなかったのか？」

貢から詩月のレッスンが上手くいっていないことを聞いた理久が、詩月に声をかけた。


「たまには息抜きも必要だぜ。貢と郁子を誘って弾いてみないか？」

「息抜きに合奏？」

「いや、路上ライブだ。人を惹きつけて感動させる演奏ってのは、けっこう難しいよな。『モルダウ』や『ライブハウス』みたいな温室で弾くより価値があると思うぜ」