雨に似ている
「……これでも横顔には自信があるんだ」

詩月はボソッと、つけ加えるように言った。


郁子は詩月の横顔を見つめ、確かに「自信がある」と豪語するだけあるなと思う。

郁子は古典の授業の間中、詩月の様子を見ながら、ショパンの横顔をずっと考えていた。


週末、礼拝室に響くピアノの音と歌声。

「素人の合唱のようなものだから」

郁子は詩月の言葉を思い浮かべ、苦笑する。

聞き覚えのある曲「アーメイジングレイス」歌声に、圧倒され今にも涙が零れてきそうなくらいに胸が熱くなる。


「素人だなんて……」と呟く。


歌声に添うピアノの音色が、歌声を引き立てる。


――ピアノを弾く時、客席から見えるのは横顔。


郁子は「確かに──」詩月の言葉を思い出して頷く。

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