雨に似ている
折り鶴
詩月は主治医との話を終え病室に戻ってきた母親の、目を腫らした顔を正視できなかった。
検査結果は、予想していた以上に芳しくなかったのだろうと思う。
詩月は母親の悲しむ顔を見たくなくて、自分からは何も聞かなかった。
詩月には母親が努めて気丈に明るく振る舞う姿が、痛々しく思える。
長年、ヴァイオリンを弾いている母親のスラリとした長く形の良い手。
母親が薬指に光る指輪に目を落とし、嗚咽をこらえ肩を震わせている。
今にも瞳から零れ落ちそうな涙の雫を幾度も、ハンカチで押さえる。
詩月の胸の奥で、口にできない思いがチリッと騒ぐ。
「ごめん」
詩月はただ、それだけ言うのが精一杯だった。
数日後。
詩月は窓から半月ぶりに見上げた空を、大きくとても眩しく感じた。
窓枠から見える小さな空でなく、どこまでも続く空の青さを。
検査結果は、予想していた以上に芳しくなかったのだろうと思う。
詩月は母親の悲しむ顔を見たくなくて、自分からは何も聞かなかった。
詩月には母親が努めて気丈に明るく振る舞う姿が、痛々しく思える。
長年、ヴァイオリンを弾いている母親のスラリとした長く形の良い手。
母親が薬指に光る指輪に目を落とし、嗚咽をこらえ肩を震わせている。
今にも瞳から零れ落ちそうな涙の雫を幾度も、ハンカチで押さえる。
詩月の胸の奥で、口にできない思いがチリッと騒ぐ。
「ごめん」
詩月はただ、それだけ言うのが精一杯だった。
数日後。
詩月は窓から半月ぶりに見上げた空を、大きくとても眩しく感じた。
窓枠から見える小さな空でなく、どこまでも続く空の青さを。