復讐

「………俺は」

「俺は?」

私は先を促した


「………組を守ろう…

俺はお前のお陰で気づかされた………」

私は顔には出さなかったが心底驚いた

さっきまでの軽率な行動や言動………
どこを見ても組を守ろうなんて思っていない感じだった

なのに、今なんといった?

“組を守る”

大河はそう言ったんだ

「気づかされた?
どういうことだ?」

私は大河の言葉が引っ掛かった

「その言葉のままだ

お前の顔から…
一つ一つの言動や行動からは俺にはない、自分の組のことを誇りと自信を持っている

そりゃ、俺だって若頭になった時はあったさ

だけど、親父は最低だった
組の存続だけを見ていて、組員なんて身内とも見てない…………
逆らう組員には死ぬ寸前まで暴力を振るう


始めこそ俺はそんな親父にたてついた

でも親父は組長だ………
組のトップの言うことは絶対、逆らってはいけなかった

俺はその時、自分も親父と同じ考えを持とうと思った
その方が楽だとおもったからな



だが違ったみたいだ……
お前を見てるとやっぱり
俺には無理だ
組員だって俺の身内なんだから……
酷いことはもうできない…」


苦しげに顔を歪ませながら大河は私と柊に話した

もとから腐っていた訳じゃなかったんだな……

あいつはあいつなりに苦しんだ結果だったんだ

「なら、お前から変わっていけばいいんじゃないか?」

柊が言った

「変わる?」

大河が聞くと柊は

「あぁ、お前から変わればいい

お前がこの腐った組を建て直せ」

そう言いきった

「必要なら私たちも力になる」

その後に私も言う

大河の話を聞き終わってから私は大河の印象が変わった

多分、柊もだろう

元はいい奴だったんだな……大河は

腐っていたのは組長だけだったことがわかった


「俺が変わればなにか変わるか?

もう、やりたくもない臓器売買やクスリの横流し……

そんな仕事をやらなくてもよくなるのか?」

「あぁ
変われるよ

大河がこの組を正統派に戻せれる」

変えるのは難しい…
一度、悪くなったものを良いものに変えていくのは相当難しいだろう

だが、大河ならできるはずだ

目の前にいる大河の顔をしっかりと見る

その目はさっきの濁った目ではなく
どこか、
スッキリとした澄んだ目になっている


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