私の優しい人
 私の隣の席には背の高い後輩がいる。

 この後輩の場合は顔もなかなか良くて、今はすっかり見慣れて何も感じなくなってしまているけれど、恐らく本物のイケメンと言っていい。

 最初こそオオッと思ったものの、 日常の仕事が絡むと顔なんて二の次。仕事が全てでどうでもよくなるものだとわかった。

 啓太さんも、会社では女子社員の熱い眼差しを受けているのかもしれない。

 私が知らないだけで、この後輩みたいに騒がれていたりするのかな。

 そんな事を考えながらその後輩をじっと見ていたら、何かを感じ取ったその彼がふと顔をこちらに向けた。

「何か、用ですか?」

「いや、工藤さんも素敵ですけど、私の彼の方が格好いいなぁって思って……」

 途端、苦いものでも含んだような顔をされた。

 それはそうだよね。

「あれ、そういう事、言っちゃう人でしたっけ」

「つい、ね。……すいません」
 笑って誤魔化すのをやめて、素直に謝り頭を1つ下げる。

 私は大人しく目の前の仕事に戻った。

 私は病にかかっている。

 恋の病。

 一年も続いているこれは、もう本物の病気だ。

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