私の優しい人
 夕方前には彼と別れて帰宅した。

 部屋に直行し旅行社で集めたパンフレットを吟味し、パソコンで検索をかける。

 近場の温泉を探したけれど、それでは宿への到着が深夜になってしまう。

 浴衣、温泉、会席料理。
 全て涎が出そうなほど魅力的だけど、出張帰りの彼を翌日まで引っ張り舞わす訳にもいかない。

 結局、散々迷った末、いつもの待ち合わせの場所であり、新幹線も停車する主要駅から直結するホテルに予約を入れた。

 美味しい夕食は取らずに各自で。
 当然、観光なんてない。

 純粋に一泊だけをして解散しよう。

 もちろん支払いは私。

 何度も画面を見て、予約条件を確認する。

 ダブルの部屋。朝のルームサービス。レイトチェックアウト。
 完璧。

 思わずパソコンの前でニヤリと含み笑ってしまう。

 自室に一人きりとはいえ、そんな自分が気持ち悪い。

 可愛い彼女の為にサプライズで、外資系ホテルなんかに連れ込む彼氏の気持ちがよくわかる。

 今回はサプライズではないけど、いいお泊りになるはずだ。

 準備のドキドキはそのまま満足感へと変わっていた。
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