私の優しい人
◇5◇
 デパートで時間潰しつつ、彼の残業が終わるのを待って向かったのは、個室のある居酒屋。

 電話でお泊りデートのプランは報告してある。

 出張前に会えるのは今夜が最後になりそう。

 アルコールは啓太さんだけ最初の一杯を飲んだ。後は烏龍茶で食事をとる。


 枝豆、たこわさ、ホッケ、お造り。

 どれも定番だけど、私もはケチな所があってどうしても値段が気になってしまう。

 洒落っ気のないこのお店は、メニューも大して捻りがない。

 家でこれだけ出せたらどれだけ節約になるだろう。

 食に関してはつい原価計算してしまう。
 子供の頃からスーパーに通い、値段もシビアにチェックしてしまう私の心は完璧な主婦だ。

 最近、今までになく会う事が多くなっている。

 2人きりで完全に気を抜けるのはホテルだけだし、必ずお金が掛かる。

 経済的にも身体的にも、彼の負担は小さくない事をわかっている。

 無理していないならいいけど、忙しすぎる彼の体も少し心配になる。

 私達のデートの全ては今までもこれからも外。

 家でまったりする事はないし、手料理を振舞う機会はない。
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