私の優しい人
 30代での結婚なんて確かに遅いと言い切れない。

 でも、誰にも言った事はないけど、私は20代のうちに子供を一人産んでおきたいと思っている。

 小さな頃からそういうものだと思っていた。

 きっと25才位の私は誰かと結婚して、その後は子供を2人産むんだろうなって。

 でも、その年齢を過ぎて大人になった私の中身は、ちっとも成熟していないまま。むしろ後退してる気さえする。

 男の人はそうでもないらしいけれど、女は、私は、数字にこだわる。

 自分の年齢に……

 確かに最初から結婚は考えていないと聞いていた。

 受け入れて付き合い始めた。

 人の心は変わる。
 彼にも変わって欲しいと願った。

 私の事が好きなら変わって欲しかった。

 彼は優しい、気配りもできる、たけど、女心が分からない人。

 今はそう断定してしまう。

「里奈ちゃん泣かないで」
 静かに涙が零れていた。

 意識せず動き続けていた箸がホッケの身を汚く無残にしていた。

 私がボロボロにしたのは、それだけじゃない。

 迂闊な事を口にして、私が私自身を傷つけた。

 涙がいつまでも流れる。

 彼の前で、人前でこれほど泣くのは子供の時以来かもしれない。
 止まれ止まれと願うほど、言うことを聞いてくれない。

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