私の優しい人
「もう、里奈、何やってるの」

「大丈夫~?」

 連れの同僚達が騒ぐ中、一番冷静だったのは啓太さんだった。

「大丈夫? これ使って」
 
差し出されたのはクルクル巻かれている真新しい真っ白なおしぼり。

 騒ぐ女子を後目に、厨房の方まで行って雑巾まで取って来てくれたていたのだ。

 こんな形で自分の存在をアピールしてしまった。

 恥ずかしい……

 けれど素直に感謝し、後は自分で始末をした。

 彼の表情は柔らかい。
 そこに迷惑そうな感情は当然なくて、小さな子供の世話をやくお兄さん、そんな感じだった。

 それからはなるべく前に座っている人に目をやる様にしていたけれど、暫らくするとつい啓太さんを見てしまっていた。

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