私の優しい人
 そんな彼女への僕の想いを乗せるのは、ワンコインのブーケ。

 グラスに並べられた幾つかのブーケの中から迷わず選んだのは、オレンジ色が輝くそれだった。

 時には鮮やかに、時には脇を飾る小花達のように可憐に、そのどちらの花も彼女を表しているようだ。


 なぜ彼女が泣いていると思ったのだろう。

 涙を流した姿を見たわけじゃない。

 心に引っかかったのは、きっと僕自身に変化があったからだ。

 彼女に会わなきゃ駄目だ。今すぐ。


 迷ったら基本に戻る。

 難しく考えすぎない。
 シンプルに考えればいい。


 出張用の大きな荷物を抱えたまま、ブーケと共に彼女へと続く電車に乗り込む。

 ゆっくりと滑り出し、不規則なリズムが僕の興奮を収める。

 既にしてしまった気もするが、改めてプロポーズしよう。

 彼女の顔を見た時、自然に出る言葉に任せればいい。

 優しい彼女なら、どんな僕も受け入れてくれるだろう。

 これからの僕は、もっと幸せになるんだ。





 おわり
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