私の優しい人
 空いていた部屋は一つだけで、迷う必要はなかった。


 順にシャワーを浴びてお互い綺麗になってから向き合う。

 化粧は少し落ちてしまったけれど、それは薄暗闇が隠してくれた。
 
 近づく顔。
 黒い瞳の奥に、私が揺れる。

 顎を持ち上げられ、上を向いた所に、最初は触れるだけのキス。

 そしてゆくっくりと深いキスに変わる。

 重なった唇は、やっぱり柔らかい。
 
 上にあった彼の手が、下へ向かう。
 胸を愛撫され、徐々に下へ向かう手。
 何かの手順をなぞっているように丁寧だった。

「その顔、かわいい……」

 きっと頬が熱を持って赤く染まっている。

 体まで火照って、蒸気を発しているかもしれない。

 気持ちがほぐれて、肌が馴染んで、全てを啓太さんに委ねた。
 昨日まで知らなかった体温に包まれて、重みを預けられる心地よさに目を閉じた。
 
 わかった事が1つ。
 彼はちっとも草食じゃなかった。
 肉食を隠したロールキャベツ男子。

 内側に潜んでいたのは、がっつりとした肉じゃないけど、旨みを含んだ挽き肉。

 私はその最初から、啓太さんにはまってしまっていた。

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