桜花録【オウカロク】―囚われし真実―
籠の中の姫君は
「おい、聞いたか?また姫君が戦地へ赴(おもむ)いたらしいぞ」
「またか……あまりにでしゃばりすぎなのでは無いのか?」
真哉(まがな)の自陣にて、なにやら二人の兵士が不穏な雰囲気をただよわせながらコソコソと噂話をしている。話の内容から察するに彼らの噂話の渦中の人物と言うのは、真哉家の姫。真哉月華(まがなげっか)のことだろう。
「いくらお強いとはいえ、ここまででしゃばられられると__」
「……られると、なんだ?」
「!?きょ、恭時様!」
兵士が言葉を続けようとした時に、恭時……と呼ばれた銀を貴重とした袖の無い羽衣のようなものを纏(まと)った黒髪の青年が二人の会話を途中で遮る。