異世界に転生しました...てかされました‼︎

「ユアン！しっかりして！ユアン！」


明かりの見える方から女性の悲鳴が聞こえてきた。どうやら、女性と一緒にいたユアンと言う男が、ふたりを囲んでいる山賊に横腹を切られたらしい。横腹から血がでている。

（これ…ヤバくね？）

ユランと言う男に守られている女性は泣いているし、ユランは、血を流しすぎたせいか、ふらついている。立っていられるのがやっとなぐらいに。
すると、山賊の中からいかにも大将らしいいかつい男が出てきた。


「おいおい、ナイトさんよぉ～、もうふらふらじゃねーかよ。さっさとそこの女を渡しゃいい話なんだしよぉ～。ﾆﾔﾆﾔ」

「お前らどもなんかに…このお方を、差し、出すわけには、いくか！この方は、命に代えても、守ってみせる！」

「ユラン…。」


（なるほど…大体の成り行きはつかめたぞ。）


たぶん、あのふたりは、森を歩いている途中に山賊に襲われた。理由は簡単。あの可愛らしい女性を売り物にする気だろう。それで今に至る…ってことかな。
すると、山賊たちが大声でゲラゲラと笑いだした。


「命に代えても守るか…だったら、死ね～！！」


そういって、山賊の大将がユランの胸を切り裂いた。


「ぐぁ！」

「ユラン！」


ユランはその場で倒れた。女性は名前を呼びながら、泣き叫んでいた。山賊たちは、ゲラゲラと笑っていた。


「よしおまえら！こいつを捕まえろ！」


山賊たちは女性に近寄っていく。

（まずい！さすがに今は彼女を助けなきゃ！）

俺は、隠れていた木の影から出ていこうとした瞬間、動けなかった。山賊たちの顔には驚きと焦りが見えていた。
何故なら…


「よくも…よくもユランを…」


今まで泣いていた彼女が立ち上がり、殺気を振り撒いていたからだった。