極上ドクターの甘い求愛
『ねぇ、繭ちゃんー。何でそんなに怒ってんの?』
「………。」
病室を出ても、歩くスピードを速めても、岩崎先生は私に着いてきた。
「…あの、先生は明けですよね?お疲れでしょうし、早くお帰りになったらどうです?」
周りの視線が痛い廊下から、人気のない階段に入った瞬間に、私は後ろにいる岩崎先生に向き直って睨みあげた。
ただでさえ、歓迎会のこととお弁当の件で騒がれてるっていうのに。岩崎先生に害は及ばないまでも、私はそうはいかない。
そもそも一薬剤師である私が易々と近づいてイイ人じゃない、岩崎先生は。
『繭ちゃんが今週の木曜に俺とデートするって言ってくれたら帰るかな。』
「……それはさっき丁重にお断りしました。」
『あっ、ちょっと待ってよー繭ちゃん!』
これじゃあ埒が明かない、と察した私は、ふいっと岩崎先生に背を向けると、薬剤部に戻るために階段を下りていく。
頑なに拒否する私の後ろを着いてくる岩崎先生は、まるでご主人様を追いかける犬のようだ。