極上ドクターの甘い求愛



『木曜日、何か予定があるの?』

「……。」

『ないんでしょ。なら、俺とデートしようよ。ね?』


勝手に私の無言を肯定と捉えないでくれませんかね。

……当たってはいるんだけどさ。平日に休みをもらったって、都合よく出掛けられる友達なんていない。


「しません。」

『だから何で?』

「……ゆっくりしたいので。」

『じゃあ俺とゆったりデートしよう。これならいいでしょ?』

「……しません。」

『繭ちゃんー!』


いくら誘ったって無駄なんだから。

これ以上岩崎先生と関わってナースさん達に睨まれるわけにはいかないんだ。必要以上に刺激したらマズい。私の院内での存続に関わってくる。


『たまには息抜きしたほうがいいって。最近、繭ちゃん仕事ばっかりじゃん。』

「……私のプライベートに干渉してこないでください。」


目も合わせずにノーと言っても、アイドル並みの笑顔で私の顔を覗き込んでくる先生は、それはムリと星を飛ばせて言ってきた。


『仕事もそこそこに俺とデートしない?』

「ッ…お断り――」

『当日、迎えに行くからね。』

「ちょっと、せんせっ――」

『木曜、楽しみにしてるからー!』


これは最早、言い逃げってやつだ。

勝手にデートの約束を取り付けた岩崎先生は、笑顔で消化器外科の方に向かって行った。

――うそでしょ。これは何かの間違い――なわけないか。

これ以上言っても、きっと先生は聞く耳を持たないだろう。だって岩崎先生って一度決めたら曲げない頑固な人だから。

…せめて職員にはバレないようにしないと。と、それだけを思って憂鬱になった。



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