極上ドクターの甘い求愛
「――っとと、」
薬剤部に持ってくるようにと指定された薬品は液体のものばかりで、それが入った段ボール箱を3つも抱えるとなるとさすがにキツい。
でも、ここで一気に持っていかなきゃ、また仕事が遅いだの業務が回らないだの、グダグダ言われるだけ。そんなことを言われるのは嫌だった。私は純粋に、仕事がしたいのに。
「うっ……!」
『ッ、咲坂ちゃん!?』
「――っあ、前田先輩…!」
地下の階段を上り終えたところで、服薬指導を終えて帰ってきた前田先輩と遭遇した。
段ボール箱を3つも抱えてぎりぎり顔が見えるか見えないかの瀬戸際で私の存在に気づいてくれた前田先輩は、1つ持つよと一番上の段ボール箱を抱えてくれた。
おかげで抱える重量が3分の2に減り、腕に入っていた力が少し緩まる。
『どうしたの?こんなに薬剤抱えて…、』
「いえ、橋本さんに倉庫から持ってくるようにと言われて、至急ということだったので一気に持っていこうと思ったんですけど…さすがにキツイですね。」
『当り前じゃない!この量…女の子に持たせるようなものじゃないわよ。何を考えてるのかしら、橋本さんってば。』
眉間にしわを寄せて渋い顔をする前田先輩に、あははと空笑いを返した。
突然、薬剤部の方々の態度が変わったことの原因は、分かっている。
私と岩崎先生のことだ。歓迎会の件もお弁当の件も、傍から聞けば到底許されない話。
岩崎先生は皆のものだから近づいちゃダメだって、頭では十分すぎるほど分かってはいるんだけど…。どうしようもない。何せ、私が近づかないようにしていても、向こうが近寄ってくるのだから。