極上ドクターの甘い求愛



――「え…?お母さん、もう一度…言ってくれる?」


岩崎先生とのデート前日夜。

突然かかってきた母からの電話を不思議に思って通話ボタンを押すと、母からとんでもない話を持ち掛けられた。


『見合いよ!見合い!』

「見合いって……いきなり、どうしたの?」


興奮気味の母からの縁談話。

母がこんなにも鼻息を荒くして興奮しているのは…、お見合い相手が相当な実業家さんらしい。

どこから舞い込んできたのかと不審に思っていると、お父さんの上司から持ちあがった話だとか。

遠くで断れなくてすまんな、と申し訳なさを含んだお父さんの声が聞こえたのもつかの間、興奮しているお母さんはこれで我が家も安泰ね!なんて言ってる。


「私……行く気ないんだけど…。」

『あら、お付き合いしてる方でもいるの?』

「それはっ……いない、けどさー」


母の問いかけに、一瞬脳裏にちらついた岩崎先生の笑顔。

いや、違うでしょ!とぶんぶんと頭を横に振って、なんとか岩崎先生の残像を脳内から消去する。

だったらいいじゃないの!と見合い話を勧めてくるお母さんに、私はどんどん表情を曇らせていく。


「…どーせ、そのお見合い週末でしょ?その日は日勤で――」

『そんなことは知ってるわよー。この前、繭からのシフトのメール見たもの。』


……だったら、

見合いをしなくて済むという淡い期待は、一瞬で消えていった。



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