極上ドクターの甘い求愛
『向こうの方ね、三上さんって言うんだけど。三上さんがね、お見合いの日時は私達に合わせてくれるって。』
「……。」
ねっ、優しい方でしょうー?というお母さんの電話越しの声は、とても嬉しそう。
でも、私はそんなことには一切興味ない。
男の人なんて……今は岩崎先生のことで十分だ。
『だから、お見合いの日取り、明日にしちゃった☆』
「……はっ!?」
『思い立ったが吉日、っていうでしょう?こういう話は、早く早くにしないとねー!』
「ちょっと待ってよ、お母さん!」
何でそうなるのよ!?
私のことなんて考えてもいないお母さんの行動に、私の体は怒りでかあっとした。
『何?』
「木曜日は私、予定があるの!」
『…あら、何の予定なの?』
「それはっ――」
『繭ってば、そう言えばお見合いナシになるとでも思ってるの?そんな子供みたいなことはやめて頂戴よ。繭が立派な薬剤師になってくれたのはお母さんも嬉しいけど、男っ気もないんじゃあお母さん、おちおち老後生活なんて送れやしないわ。』
「……っ、」
『お見合いは明日。お父さんとお母さんで朝一番に迎えに行くから。準備して待ってなさい。……あ、それと、くれぐれも失礼のない服装でね。一応、家にある繭のドレスも持っていくからね。』
「ちょっとお母さっ――!」
止める隙もなく切られた通話。
ツーっツーっツーっと虚しい電話音が耳元で鳴り響いた。