極上ドクターの甘い求愛
一度苦手、とマイナスイメージを持ってしまったらもうダメだった。
相手方にどんなに可愛らしいと素敵だと褒められても、全然心に入ってこない。
物腰柔らかい笑顔を常に浮かべている目の前の三上さんに対しても、あまり好印象は抱けなかった。
高学歴で高収入で、趣味がクラシック鑑賞で、年に4回は海外旅行に行く、と言われても、その情報は右から左に流れていくだけ。
高学歴って岩崎先生の方がもっとすごいし。高収入っていったって、岩崎先生だって負けてない。クラシック鑑賞なんてタダ眠たいだけじゃない。私は海外よりも国内旅行の方が好きだし。フェラーリとか乗ってたって、運転技術で言えば岩崎先生の方が上手だよ、きっと。
『私共も、優秀な娘さんを妻として迎えれたならば、とても嬉しく思っておりますのよ。』
優秀な、という単語に力が入っているのが分かって、乾いた喉を高級なシャンパンで潤した。
この人たち…私の肩書きで結婚しようと思ってるの?
『……そろそろ私達はお暇しましょうか。』
『ええ、これからは当人同士でごゆっくり。』
『募る話もありますでしょうしね。』
「ちょっと、お母さっ――!」
オホホ、と有無を言わせぬ笑顔を張り付けたお母さんは、お父さんを引きずるようにして会場から出て行ってしまった。
ちょっと待ってよ…。
突然セッティングされてしまったこの状況に、私はどうすればいいのか全く分からなくなってしまった。