極上ドクターの甘い求愛
『――その汚い手で触んないでくれる?』
最後の抵抗も虚しくお見合い会場から廊下に引きずり出された瞬間、横から聞きなれた声が聞こえた。
「っ――!!」
『繭に触っていいの、俺だけだからさ。』
声がかかった方へ振り向けば、そこには私服姿で立っている岩崎先生。
な、んで…――っ
こちらに目を向けている先生の笑顔は、心なしか冷たさを孕んでいて。聞かなくたって、今の岩崎先生が心の底から怒っていることが、見て取れて分かった。
『離せよ、今すぐ。』
『~~~っ……今は僕と繭さんのお見合いなんだが、邪魔しないでくれないか?』
「ッ!?」
口元に充てられていた三上さんの手がパッと離れた。…その代わり、私の腕を掴む力は増大した。
まるで、岩崎先生の元には行かせない、とでもいうように。
咄嗟に取り繕った偽物の笑顔で、三上さんは平然と何でもないように嘘をつく。
この人、最低だ――!
『――繭。』
「っ……?」
岩崎先生に名前を呼ばれて、胸の奥が高鳴った。