極上ドクターの甘い求愛
『こんな愛想もない地味な女、コッチから願い下げだ!』
「っっ!?」
『繭!』
やっと掴まれていた腕が解放されたと思って安堵していた瞬間だった。力任せに背中を押されて、体勢を崩した私は前のめりになりながら大理石でできた床に倒れこむ。
顔面をぶつけそうになった瞬間、柔らかい何かに身体が包まれて、全身を襲うはずの衝撃が去っていった。
『・・・大丈夫?』
「っ……は、はい…!」
倒れる寸前、岩崎先生に抱き留められたことに気づいた瞬間、胸がドキリと一際大きく高鳴った。
岩崎先生の大きな手が優しく私の手を掴んで、ゆっくりと身体を立たせてくれる。
『繭の魅力が分からないなんて、可哀想な人だな。』
『何だと――ッ』
『行こ、繭。』
「っ――!」
三上さんの怒りの言葉も聞かずに、岩崎先生は私の手を握ったまま、廊下を進んでいく。
『――何、何があったの!?…繭!?』
「っ――!」
私達の騒ぎ声が聞こえたのか小走りでやってきたお母さんとお父さん、それと三上さんのお母様に途中会ったけれど、何も言えないまま、私は岩崎先生に連れられるままホテルを出たのだった。