極上ドクターの甘い求愛



――キィッ


ホテルの駐車場に停めてあったベンツは、私を乗せると岩崎先生の手によって動き出し、数十分間走り続けると見知らぬ丘の上に停まった。

こんな長い時間、岩崎先生と無言だったことなんてないから、気まずさが募る。


『……。』


岩崎先生は私の方に一瞥もせず、何も言わずに車から出て行ってしまった。つられて、私も車から降りる。

景色を一望できる丘の高台に向かった先生の後を追った。


「…岩崎先生…?」


恐る恐る、私に背を向けて立っている岩崎先生に声をかけた。


『――ごめん。』

「え……?」


先生から発せられた言葉は、私の心に鉛のように落ちてきて。

ごめん、だなんて、いきなりどうして…?

真後ろに立っているここからじゃ、先生の表情を見ることはできなくて、先生の言葉をどう受け止めたらいいのか分からなかった。


『…繭ちゃんのお見合い、勝手にぶち壊して…ごめん。』

「・・・っ」


そう言った岩崎先生の声は、すごく小さくて。

さっきまで"繭"って呼び捨てだったのに、いつの間にか"繭ちゃん"に戻っていて、心のどこかでほんの少しの淋しさを感じてしまった。


「そんな、謝らないでください。先生のおかげで私、助かっ――」

『部外者の俺が、乱入すべきじゃなかったんだ。』

「っ――!」


"部外者の俺"

先生の言葉が、私の胸に突き刺さる。

何で…そんなこと言うの?



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