極上ドクターの甘い求愛
『とにかく俺が言いたいのは、繭ちゃんのことが好きで好きで仕方ないってこと!分かった?』
「っ……はい」
『ん。それならいい。』
私のセットされた頭を崩さない程度に撫でてくれる先生の手はとても大きかった。
その優しい仕草に、心が弾む。
この時ようやく私は、先生の気持ちを受け取ったのかもしれない。軽いと思っていた岩崎先生の私への想いは、私が抱えきれないくらいに大きくて、重くって。
そんな先生の気持ちを無下に扱ってきた自分が恥ずかしくて仕方がない。
『これからは、俺のこともちゃんと見て。』
「……はい」
『俺だって、好きな子を想う一人の男なんだ。いつまでもこの関係を続ける気なんてないから。…覚悟しといて。』
………っ
先生の言う覚悟って、どんなものなのだろう。
よく分からないけどうなずいて見せると、先生は安心したように笑みを浮かべた。
きっと、先生のことを色眼鏡で見ないで、ありのままの先生を見てほしいって、ことなのかな?
『…じゃあ、帰ろっか。もうすぐ夕方だし。』
「あ…はい。」
『――その前に、』
「え――っ?」
パサリ、とさっきまで先生が羽織っていたジャケットが、先生の手で私の方に掛けられた。
『5月でも、まだちょっと肌寒いからね。風邪ひかないように。』
「っ……ありがとう、ございます…ッ」
どういたしまして、と言って私だけに向けた先生の笑顔が、とても眩しく見えた。
その笑顔にドキリとしてしまった私は、先生が車に戻っていて私に顔を向けていなくて良かった、とズレたことを考えてしまうのだった。