極上ドクターの甘い求愛



――先生のベンツで家まで送ってもらって、夜を迎えた。

真っ先にお風呂に向かい、いつも以上に頑張ったメイクも今日の疲れもお湯で流した私は、一息ついた時、お母さんに電話をかけた。


『――もしもし、繭!?』

「あ、お母さん…。」


今、どこにいるの!?と聞かれて、家にいると答えると、お母さんはやっと落ち着きを取り戻してくれた。


「ごめんね、お母さん。お見合い、あんなことにしちゃって…本当にごめんなさい。」


ホテルを飛び出して、先生の車に乗っている間、私の心の中はお母さんとお父さんへの申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

お母さんはとてもやる気だったのに、良縁だって喜んでくれていたのに。お父さんも、上司からのお見合い話を不問にしちゃって会社での立場が怪しくなるはずなのに…。


『…もういいのよ。お母さんも悪かったわ。繭に恋人がいたなんて思いもよらなくて、あんな話持ちかけちゃって。』

「え…?」

『繭も繭よ~!恋人がいるならいるって、何で昨日言ってくれなかったの!?言ってくれてたらお母さん、今日のことキャンセルにだってしておけたのに~。』


え、ちょっと。

私に恋人がいるって…何でそんなウソを言ってるの?


「ちょ、ちょっと待ってよ、お母さん!私、恋人なんて――」

『何言ってんのよ!お昼に繭を連れ出した彼、なんでしょ?』

「えっ?」


そう言えば、岩崎先生とホテルの廊下を走っていた時、お母さんたちと目が合った。…そっか、それで勘違いしちゃったんだ…!

違う、と訂正したいのに、受話器の奥でお母さんの喜ぶ声が聞こえてくる。


< 132 / 234 >

この作品をシェア

pagetop