極上ドクターの甘い求愛
『もしもし、繭か?』
お父さんはお母さんのすぐそばにいたようで、すぐに電話の声がお父さんに変わった。
「うん。お父さん…ごめんね。あの話って上司からかかったものなんでしょ?…大丈夫?」
『…あぁ。繭は何も心配しなくていいから。』
心配する私を宥めるようなお父さんの声を聴いて、心が少し落ち着いていく。
でも、お父さんに対する申し訳なさだけは、いくらお父さんに大丈夫だと言われても、私の心の中に居座り続けた。
こういったいざこざが大嫌いなお父さんだから、きっとあのお見合い話ももっと穏便に収束させたかったはずだ。それを壊したのは、紛れもなく私自身。
「…会社でのお父さんの立場が危うくなるとか…ないよね?」
『ああ。大丈夫だ。元々あれは、別の人に行ってた話だから。お父さんの同期にな、繭と同い年くらいのお嬢さんを持つ男がいてな、ソイツに回っていた話だったんだが…、その娘さんが急遽結婚が決まったらしくて、それでお父さんの元に舞い込んだものなんだよ。…繭は何も気にすることなんてないんだぞ。』
「……そうなんだ。」
お父さんの話を聞いて、心のしこりが少しずつ取れて行く。
私と同い年くらいの女の人が、結婚――…。
私は薬学部だったから、最短で卒業して薬剤師になっても、その時には24歳。
でも、私がやっと薬剤師として働きだしたころ、周りの同年代の人達はバリバリ働いてるんだ。結婚なんてまだまだ先だと思ってたけど、もう私は結婚適齢期なんだ。