極上ドクターの甘い求愛
言いようもない取り残されたような気持ち悪さが私を襲った。
大学に入った私は学部内の子たちと一緒にいることが多かったせいか、世間とのそういった部分が全く見えてなかった。
大学が6年制で、24歳から働き始めることが普通だと思っていたけれど、世間的に見れば私のほうが異端だった。
25歳にもなれば結婚する人は当然いるだろうし、妊娠して子を持つ人だっている。結婚とか、女としての幸せはまだまだ先だなんて、大きな間違いだ。
『…それよりもお父さんはな、繭が素敵な人と出会えて幸せに生活していることのほうがよっぽど大切なことなんだぞ。』
「え…?」
『今まで繭は、勉強勉強の毎日で、夢を追いかけるのにいっぱいいっぱいで、恋とか青春には見向きもしてなかっただろう。そんな繭が、女性としての幸せを掴んでくれたら、これ以上の幸せはないんだ。お母さんもそう思っていたから、繭のお見合い話を強引に勧めたんだぞ。』
「……っ」
"いつも一生懸命に頑張る繭には、いっぱい幸せになってほしいんだ。"
そう言ってくれるお父さんと、今もきっとお父さんの横で私との電話を聞いているお母さんの、私への愛が一気に伝わってきて、思わず涙が頬を伝った。
電話越しのお父さんに泣いていることを悟られないように、口元に手を当てて声を押し殺す。
気を緩めてしまえば、嗚咽交じりの声が零れてしまうから。