極上ドクターの甘い求愛
極上男子が嫉妬したら。
――翌日。
ダンッ
『もう何なの!?咲坂ちゃんに文句があるなら直接言えばいいじゃない!咲坂ちゃんもそう思うでしょ!?ねぇっ!?』
「…前田先輩、ビール零れてます…。」
前田先輩がビールジョッキを力のままにテーブルに叩きつけるから、満タンだったビールがテーブルの上に水溜まりを作った。
水溜まりならぬ、ビール溜まり…なんつって。
なんの引っ掛けもかかっていない、ジョークにもなっていないジョークを心の中で飛ばして心の中で笑った。
『何呑気なこと言ってんのよーっ!本当、咲坂ちゃんは性格が良すぎなの!今日はもう、ドンッとぶちまけて!この腹の中に貯めこんだムカつきをドンッと!さぁ早くっ!』
「だからビールが溢れてますって、先輩…っ!」
"ドンッと"と先輩が言うたびにビールジョッキをテーブルに叩きつけるものだから、ビール溜まりが大きくなっていく。
店員さんを呼んで台拭きをもらった私は、居酒屋に入って早々荒れ狂った前田先輩の介抱を始めた。
『だいたい、今日の昼も、何なの?薬剤履歴を確認するために消化器外科に行った咲坂ちゃんに、あんなこと言うなんて!あそこのナース達はどんな神経してんのよっ!こっちは仕事してんのよ?岩崎先生の取り合いなら就業時間過ぎてからやれっての!!』
「・・・。」
ビールジョッキ片手に怒り狂っている前田先輩が言っているのは、今日の午後、私に襲い掛かったトラブルのことである。