極上ドクターの甘い求愛
「――なんて、そんなことないですよね。だって、岩崎先生のファンなんですから。岩崎先生の悪口を言う人なんて、あそこには1人もいないですよね。」
もう氷が解け始めて味が薄くなりかけているビールを喉に通した。
20歳の頃には全く美味しく感じなかったそれが、今は毎日飲まないとやってられないくらい私の中で必需品となっていることに笑えてくる。
「ただ、迷惑かけたくないんです。岩崎先生に。」
『迷惑って…、』
「だって、岩崎先生にとっては、迷惑以外の何物でもないじゃないですか。私と先生は、元々住む世界が違う人間です。岩崎先生は私より何倍も、将来がある人です。岩崎先生の腰ひも、なんて呼ばれてる私が、周りにバッシング受けているからって先生に助けを求めるようなバカなこと、できるわけないんです。」
『……知ってたんだ、そのこと…。』
「はい。」
前田先輩は、悲しそうな表情でビールを呑んでいる。
とっくの昔に知ってた。私は院内で、密かに"岩崎先生の腰ひも"だって言われていること。
岩崎先生にメリットなんてない、私の存在。周りには、私が岩崎先生に取り入っているようにしか見えないんだから、仕方ないと思ってるけど。