極上ドクターの甘い求愛
『…疲れないの?』
「えっ?」
枝豆をチビチビ食べていると、唐揚げをオーダーし終えた前田先輩が、突然そんなことを聞いてきた。
『咲坂ちゃんっていつもそうやって一人で抱え込もうとするけど、疲れない?誰かに頼りたいーとか、思わないの?』
「…疲れた、とは思ったことないですね。この性格は昔からなので。誰かに頼りたい、とは思いますよ?でも、頼ったら自分を律せなくなるんじゃないかと思って、頼れないだけなんです。」
『ふーん…昔からって?』
「小さなころから、両親には迷惑かけたくないって思ってました。大好きな友達にも、お世話になった先生にも、いつも良くしてくれていた近所のおばあちゃんにも、自分が迷惑をかけるんじゃなくて、自分に迷惑をかけてもらいたいって。自分が頼るんじゃなくて、自分に頼ってほしいって。」
『へぇ~…そんなこと、私は一度も思ったことないなぁ~!』
自分が何事にも考えすぎていることくらい、昔から知っている。
でも、それを変えようとは思わなかった。自分に厳しすぎるならまだしも、自分に厳しいくらい、いいんじゃないかって。自分に甘い事のほうが、よっぽど人としてダメだって、そう思って。
『でもさ、私も頼ってほしいのよ。』
「?」
『責任感が強すぎる咲坂ちゃんだからこそ、私は心配なの。いつか、咲坂ちゃんが自分で抱えきれない何かを一人で抱え込んで、自分自身をダメにしちゃうんじゃないかって。だから、頼って。』
「……っ、」
『大人なんだから、それが自分一人でどうにかなるかならないかくらいはわかるでしょう?できないならできないと、素直に頼ってよ。私だけでもいいからさ。』
そう言ってハニかんで見せた前田先輩がすごく大人に見えた。
人に、頼ってほしい、なんて言われたことがなかった私は、真っ白な頭で辛うじて"はい"と言うことしかできなかった。