極上ドクターの甘い求愛
『だいたい、コイツがお前のこと守っていれば、こんな風に傷つくことなかっただろーが!咲坂が何でも溜め込もうとすることくらい分かってるんじゃねーのかよ!そんなことも分からないで好きなんて、そんなの俺のほうがッ――』
「日野くん!」
やめて、もう言わないで、と日野くんを見つめる瞳で訴える。
あれほど岩崎先生には何も言わなくていいと言ったはずでしょうと眼力で訴えれば、日野くんはよく動く唇をやっと止めてくれた。
『っあーもう、…俺が悪かったよ。』
「私じゃなくて、岩崎先生に謝って。」
『…すいませんでした。』
全然納得がいっていない声で、ぶっきらぼうに謝罪の言葉を述べた日野くん。
反省の色は全く出せていない日野くんに、先生は何も言ってくれなかった。
『……俺、もう行くわ。じゃあな。』
この気まずい空気から逃げるように、日野くんは不機嫌オーラを振りまきながら、この場を去っていく。
「先生!大丈夫ですかっ!?」
日野くんの背中を見送った私は、すぐに後ろを振り返って、殴られた先生に駆け寄った。
『…うん、ちょっと口内が切れたみたいだけど、大丈夫。』
「でもっ、一応レントゲンとか撮ったほうが、日野くん力のままに殴ったみたいだから――っ」
大丈夫と言いつつも、岩崎先生は切れた患部が痛むのか、血が付いた唇を舐めながらその端正な顔を歪ませた。