極上ドクターの甘い求愛
日野くんが先生を殴ったのは、私のせいだ。
4日前、"ぶん殴る"と言った日野くんの言葉を何かの冗談だと本気にせずに止めに入らなかった私がいけなかった。
あの時、ちゃんとそれはやめてと言っていれば、こんな風に先生を傷つけずに済んだのに。
『――繭ちゃん。』
「っ??」
口内の患部の治癒にはどのビタミンを摂取すれば良かっただろうかと頭で考えていると、ふいに先生に手首をつかまれた。
岩崎先生に目を向けると、私を真剣に見つめる先生の瞳とぶつかった。
『やっぱり嫌がらせ受けてたんだね。何で俺にそのこと言ってくれなかったの?』
「……っ」
そう聞かれて、どんな言葉を返せばいいかわからなかった私は、逃げるように先生から目を逸らした。
「もう業務に戻らないと…っ!先生も、まだ仕事があるんじゃないですか?」
『今は仕事より、繭ちゃんのほうが大事だから。』
「っ」
岩崎先生から離れたくても、掴まれたままの手首のせいで、薬剤部に逃げ帰ることは許されなかった。