極上ドクターの甘い求愛
極上男子が怒ったら。
『俺には言えない?』
「……っ」
『――だったら、仕方ないよね。』
いつも以上に低い声に乗せられたその言葉に、反射的に顔を上げれば、ニコリを微笑む岩崎先生が視界に移る。
その笑顔は、ほぼ毎日見ているあの爽やかな笑顔なんかじゃなくて、何かを企んでいるような、少し怒りを孕んでいるような、冷徹な微笑みだった。
それを見た瞬間、私の脳内が一気に危険信号を全身に発令する。
「は…っ、離してください…!」
今度はさっきよりも強めに掴まれた手首から先生の手を剥がそうと必死に腕を振るけれど、先生の力には全く歯が立たない。
それでも、何をするか全く読めない岩崎先生の意中にハマるよりマシだと、全力で抵抗するも、
「岩崎先生…!離しっ――」
『――やっと捕まえたのに離すかよ。』
「・・・っ、」
声のトーンも口調も、普段とは全然違う岩崎先生の力にはやっぱり叶わなくて、掴まれた手首はそのままに、先生に体を引っ張られた。
「先生!どこに――」
『少し黙って。』
「……っ」
これからどこに行こうとしているのかもわからない岩崎先生に連れられるままに、私は中庭を後にした。