極上ドクターの甘い求愛
そんな前田先輩に、なんてことしてくれたんだ、という負の感情は、どうしてか生まれてこなかった。
『…人に言えないようなこと、してんじゃねーよ。』
……!
え……今、言ったの…誰?本当に、岩崎先生…?
あまりにも普段の口調とは180度違うそれに、私は思わず先生の背中を見つめてしまう。
明らかに柔和だった態度を翻した岩崎先生に戸惑うのは私だけじゃなかったようで、男性職員はもちろん、女性職員も表情に驚愕の色を隠しきれない様子だった。
『医療人として、命を預かるこの仕事に私情を持ち込むのは、お門違いってヤツじゃないの?薬剤師としてのプライドもないのか、アンタたちは。少なくとも彼女は、そのプライド持ってたよ。君たちにどんなキツイ仕事回されても、どんな陰口を叩かれても、弱音一つ零さずに、周りに頼ることもしないで、ひたむきに仕事に向き合ってた。』
「……っ」
どうしよう。先生の言葉が…嬉しくてたまらない。
一人ハブられた職場で今にもグラつきそうに震える両足を踏ん張らせて、今まで奮闘してきた私のことを、ちゃんと見てくれていた人がいてくれたことが、嬉しかった。
それだけで、今までの逃げ出さずに頑張ってきたことが、一瞬で全て報われた気がした。