極上ドクターの甘い求愛
『彼女が何も抵抗せずに周りに嫌がらせを受けていることも言えないことを分かってて袋叩きにして、それで俺が彼女から離れていくとでも思った?そんな彼女を見た俺が、何も言わないとでも思ったの?』
初めて見る岩崎先生の怒った姿に、周囲は何も言えないようだった。
私も…岩崎先生を止めたいけれど、何て声をかけたらいいのか分からない。
こんなに静かに怒る人…初めてだ。荒っぽい日野くんが怒った時より…怖いかも。
この時、岩崎先生を怒らせてはいけないと、心の奥底で記憶した。
『これからは一切、彼女に手を出すな。仕事とプライベートの分別くらいつけろ。』
完全に薬剤部は岩崎先生の独壇場と化していた。
周囲は先生の話に耳を澄ますだけで、誰も反論しようとする人はいない。
『――それと、繭ちゃんは俺の腰ひもなんかじゃなくて、俺が好きで繭ちゃんに引っ付いてるだけだから。2度と俺達の邪魔をするな。』
「ッ――!」
これ以上言うことはないと後ろにいる私に振り向いた岩崎先生と目が合う。
その瞬間、また手首を掴まれて、私は何も言えずに先生とともに薬剤部から立ち去る。
薬剤部を出ていく瞬間、振り返った先に見えた前田先輩の私たちに向けた笑顔だけが残像として残った。