極上ドクターの甘い求愛
「先生?…岩崎先生…ッ!」
薬剤部を2人で飛び出した後、私が何度呼びかけても、先生は何も言ってくれなくて、私の腕を強く掴んだままズンズンと白塗りの廊下を歩いていく。
先生の歩幅と私の歩幅が合うはずなんてなくて、私は小走りで先生の後を付いていくしかなかった。
「せん――っ…!」
――バタンッ
廊下の奥まで来たと思ったら、ミーティングルーム1の部屋の前で進めていた足を止めた先生は、乱暴に扉を開けると私の身体を力のままに室内に引き寄せて、扉を閉めた。
おかげで、私は先生の胸に倒れこむような姿勢で先生に寄りかかっている。
え、何?何でこんなところに――…
『繭ちゃん。』
「っ……?」
岩崎先生から離れようと身を引こうとするけど、背中に回されている先生の腕のせいで、それは叶わなかった。
なぜか先生に抱きしめられた状態のまま、先生の次の言葉を待つしかない。
『…今まで、よく頑張ったね。――もう泣いていいんだよ。』
「ッ――!!」
さっきの、薬剤部で聞いた冷たい先生の声とは裏腹に、その優しげな声色に、私を包むその体温に、いつ何時も張り詰めていた涙腺が、一気に緩んでいく。