極上ドクターの甘い求愛
「な…っんで…ッ」
泣いていいと言われて素直に泣けるほど、私は純情じゃなかった。
次第に鼻の奥に感じるツンとした痛みも、声の震えも強くなっているのに、それでも涙を流すまいとしている自分がいた。
『もう我慢しなくていい。』
グッと後頭部に添えられた先生の手が、私の頭を痛みを感じない強さで自分の胸に押し付ける。
『誰も見ないから、思う存分泣けばいい。』
「………っふ」
押し付けられた先生からは消毒液の匂いがした。
岩崎先生の優しさに触れて、もう大丈夫だからと安心を与えられて、涙で視界が揺れる。
「せんせぇ…っ」
『うん。――もう何も言わなくていい。全部、分かってるから。』
ギュウ…ッと先生に身体も心も抱きしめられて、必死に繋ぎ止めていた理性が瞬時に消えていった。
止まることを知らない大粒の涙を流しながら、私はゆっくりと先生の広い背中に震えたままの腕を回した。
岩崎先生を、離したくないと、そう思った。