極上ドクターの甘い求愛
それから数十分、我慢というストッパーを外した私は、子どものように泣き、先生に抱き着いて離れなかった。
そんな私を見捨てるでもなく、岩崎先生は何も言わず、ずっと私の背中を優しく摩ってくれていた。
おかげで癇癪を引き起こしていた私の涙も、徐々に引いてきた頃、
『…繭ちゃん。』
「っ……??」
室内にセッティングされているイスに私を座らせた先生は、屈んで私と同じ目線の位置まで下がってくれる。
その時、先生が着ている手術着の胸部に私の涙の跡が広範囲に残っているのが目に映った。
「ごめんなさ…っ!汚れちゃってる…っ」
『いいよ、こんなの。それよりも、』
咄嗟に出した声は、泣いたからか酷く鼻声だった。
キュ…ッと優しい力で太ももの上にのせていた両手を、先生の手で握られる。
改めて感じる先生の手は、私よりも一回りも二回りも大きくて、暖かくて、そんな細かなところからも先生の優しさが伝わってくる。その手に対して、また私は泣きそうになった。
『…どうして俺に何も言ってくれなかったの?相談の一言くらい、言ってほしかった。』
「っ……!」
『そんなに俺は、繭ちゃんにとって頼りない男だった?』
「ちが――ッ!」
そう言う先生の声色は沈んで聞こえて、悲しげな表情を見せた先生を見た瞬間、私は違うと何回も首を横に振った。