極上ドクターの甘い求愛
それから時間が経ち、勤務時間を終えて夕方になった。
未だ岩崎先生に渡せていないお礼。昼休みに渡しに行こうかとも考えたけど、岩崎先生はオペが立て込んでいて忙しいという風の噂を耳にして、渡しに行くことはできなかった。
オペが立て込んでるってことは昼休みもろくに取れないくらい忙しいってことだから。
「はぁー。」
薬剤部の着替え室で溜め息が零れる。
いつもだったらちょっとの合間でも私に絡むために薬剤部にやってくる岩崎先生が、今日は一度も来ていない。よっぽど忙しいのかな…。もしかして、お礼の件忘れちゃったとか?
『暗い顔してんね。どうした?』
「っ、前田先輩…!」
『お疲れ。』
モゾモゾと白衣を脱いでいると、隣のロッカーの持ち主である前田先輩から話しかけられた。
前田先輩は私より6歳年上の既婚者で、薬剤部で唯一岩崎先生を色眼鏡で見ていない立派な人である。
お疲れ様です、と返すと、何かあった?と聞かれた。
「いや…、ちょっと、」
『岩崎先生のこと?』
「っ!?」
『ぷっ…咲坂ちゃん分かりやす過ぎ!』
心の動揺が隠し切れずに体をビクつかせてしまうと、前田先輩にアハハと豪快に笑われてしまった。