極上ドクターの甘い求愛
『抹茶とバニラアイスでーす。…あれ、咲坂、寝ちゃいました?』
「う、うん…。」
薬剤部所属の男性が俺が頼んだ抹茶アイスとバニラアイスを持ってきてくれたのはいいが、繭ちゃんを支えることで精いっぱいな俺は、顔だけを向けてどうしたらいい?と聞いてみる。
『あー…じゃあこのアイスなしっすね。岩崎先生、すみませんが…咲坂を送ってやってくれませんか。』
「は?」
『コイツ、寝たら絶対起きないんすよ。』
俺の前に置いたばかりのアイス2つを回収しながら、苦笑いを浮かべた男は繭ちゃんは酔いつぶれると寝るという話を口にする。
どうやら、繭ちゃんは酔いが深くなると寝るらしい。しかも何をやっても起きない。
だから繭ちゃんが飲み会に来るときは絶対誰かが繭ちゃんのお酒のピッチを傍で調節するらしいのだが――今日は誰もその担当がいなかったと。
まあ、いつもその担当は繭ちゃんの先輩である前田がしていたらしいから、寝るまで飲んでしまったことは仕方ないかもしれない。
『院長の長い話が後であるらしいんで、今が帰るチャンスですし。』
「…そっか。じゃ、帰るわ。」
『お疲れ様っしたー!』
院長の演説がどれだけ長いのか思い知らされている俺は、即決で繭ちゃんを連れて帰ることに決めた。
周りからの"まだ帰らないで"攻撃を笑顔でかわしながら、俺は繭ちゃんを抱えて会場を後にしたのだった。