極上ドクターの甘い求愛
岩崎先生の気遣いが私の心に流れ込んできて、泣きそうになる。
触れた先生の手はとても温かくて、こんなにも人は温かいのだと気づいた瞬間、鼻の奥が痛みでツーンとした。
「……先生も、頑張ってください。」
『うん。繭ちゃんに言われたら、尚更頑張んないとね。繭ちゃん特製のお弁当ももらっちゃったし。』
うっすらと瞳を潤ませている涙を堪えてうつむいている私とは反対に、先生はいつものトーンで嬉しそうだ。
「……あの、先生」
『ん?』
心にずっと溜めていたままの想いが、言葉が、喉に引っかかって出てこない。
優しい色を宿した先生の瞳と視線が重なって、私は唾とともに出かかった言葉を飲み込んだ。
「……やっぱり、何でもないです。」
『えー?何?教えてよ、繭ちゃん。』
大したことはないからと言うけど、中々先生は引きさがってくれなかった。
「・・・先生、もう病院に行かなきゃ遅刻しますよ。」
『あ!やばっ』
「じゃ、私はこれで。お世話になりました。」
いつの間にか触れ合っていた手は離れていて。すぐに私は先生のベンツから降車した。
『また明日、繭ちゃん。』
「……失礼します。」
ぺこり、と頭を下げると、岩崎先生を乗せたベンツは病院の方角へと走り出していった。
――"先生は、どうして私ばかり構うんですか?"
半年前から心にわだかまりを作ったままの疑問は、遠くなっていくベンツを見つめるだけの私の中で、さらに大きくなっていくのだった。