極上ドクターの甘い求愛
極上男子との噂が広まったら。
――「おはようございます。」
翌日。
私は昨日のことはあまり思い出さないようにして、いつも通り薬剤部に出勤した。
『ちょっとちょっと、咲坂ちゃん!』
「前田先輩!おはようございます。」
『うん、おはよ。――じゃなくてさ!』
「な、何ですか…?」
あまり人のいない薬剤部で、自分のデスクに荷物を置いていると、早出だった前田先輩が私を見つけるなり物凄い血相で私のもとにやってきた。
あまり院内では大声を発さない前田先輩が珍しい。
『歓迎会の日、岩崎先生と抜けたって本当!?』
………え?
歓迎会の日――それは、一昨日の金曜のことを言っているのだろう。
「あー…、そう、みたいですね…。」
あの場にはいなかった先輩が知っているとなると、歓迎会の時のことは院内全体に早くも広まっているということを示していた。
……そうか、朝来た時の周りの視線はあの日のことが原因か。
病院に着くなり、職員全員から私に突き刺さっていた視線は、また岩崎先生と絡んだ私に対する冷酷なものだったんだと、やっと理解した。