極上ドクターの甘い求愛
『私が昨日聞いたのは、寝ちゃった咲坂ちゃんを送るって岩崎先生が言い出して、誰も止められずに咲坂ちゃんを抱えた岩崎先生が帰っちゃったってことよ。』
「そ、そうですか…。」
思ったより酷くはなかった。
けれど、この話を聞いた岩崎先生ファンは失神しそうなほどショックを受けただろう。その場にいて一部始終を目撃した人は、尚更。
私……とんでもないことしちゃったんだ…。
きっと今日から自分に降りかかってくるだろう心ない言葉と冷たい視線のことを考えて、胃がキリリと痛んだ。
『……それと、これは今日聞いた話なんだけど。』
「な、何ですか?」
まだあるの?
これ以上、周りに敵は作りたくないのに、という私の心からの願いは、先輩から聞かされた話によって一瞬で儚く散って行った。
『お弁当だけは誰からも受け取らないって有名な岩崎先生が、昨日の夜勤で咲坂ちゃんが作ったお弁当を嬉しそうに食べてたって。』
「ッ―――!」
目の前が暗転した気がした。
こんなに早くも昨日のことが周りにバレちゃうなんて…。昨日もっと、先生にお弁当のことは誰にも言わないようにと強く言っておくべきだったと今更思ったってもう遅い。