極上ドクターの甘い求愛
『それより、どうして岩崎先生にお弁当作ったのよ?』
「……それは、――お礼、です。」
『お礼?』
自分のロッカーから白衣を取り出しながら、私はコクリとうなずいた。
「飲み会の時に介抱してもらったので。…そのお礼で作っただけです。」
『そうなの?ふーん、そういうことかぁ。』
別に深い意味はないので、と言うと、そんなの分かってるわよ、と言われてしまった。
あぁ、前田先輩のように岩崎先生ファンの皆様にも私の主張を聞いてもらいたいものだ。
きっと、私が先生にお弁当を作ったという事実だけが独り歩きして、どうしてそうなったのかという事の経緯までは噂にはならないはずだ。
なんて都合のいい噂。私だけが悪役になるように仕組まれてる。でも……人が好む噂なんて、そんなものだと思った。
『そのこと含めて、私から皆に言っておこうか?』
「……いえ、いいです。本当のことを言っても、ただの言い訳にしか聞こえないでしょうから。」
私から何を言っても無駄だ。彼女達は私の言葉に耳を貸そうとしないことくらい、簡単に想像できる。
二コリと笑う私の真意を察してくれた先輩は、それ以上噂の話はせずに、何かされたら真っ先に私に言うんだよ、と言ってくれた。
その気遣いに心が温かくなるのを感じつつ、イイ先輩を持って良かったと思った。