極上ドクターの甘い求愛



薬剤部長を中心とした朝礼が終わり、それぞれ自分の仕事に向かう。


『…ねぇ、聞いた?消化器外科にイケメンの患者さんが入院したって話!』

『えぇ、406の大部屋でしょ?担当、誰でしたっけ?』


出会いの場が少ない医療現場では、職員が患者さんにオアシスを求めるときもある。

406号室の新規入院患者の服薬指導担当は――私だ。

ちょうどその患者さんの薬を調剤している私の背中には、グサリグサリと痛すぎる視線が刺さっている。

何でこんな時に限って私に当たるんだろう…。今日はとことんツイてない。でも、患者さんが悪いわけじゃない。

日頃の行いが善くないのかも…。これからは、善処しよう。


『咲坂ちゃん、これ406号室の丸岡さんの分ね。』

「あ、はい。」


406号室は4人まで入院できる相部屋だ。

医師や看護師の人数と比べて圧倒的に人員が少ない薬剤部では、大部屋全体を任されることなんてザラだった。

前田先輩が調剤した薬剤は、丸岡さんという胃がんを患って入院5年目になる患者さんの分。

もちろん、丸岡さんの服薬指導を担当するのは私だ。


「――服薬指導に行ってきます。」


数分後調剤を終えた私は疑義照会を終えた後、丸岡さんと新規の入院患者さんの分の薬剤を持って消化器外科の406号室へと足を運んだ。



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