労苦
 藪の中のように。


 午後一時を回る頃、会議は散会となった。


 捜査を決定づける証拠が見つからないまま。


 そして橋村に「行くよ」と言って促し、帳場を出ようとした。


 すると大村が背後にいて、


「梶間警部、あなた何か知ってるんじゃないですか?」


 と訊いてきた。


「いえ、別に」


「本当ですか?」


「ウソついてどうするんです?」


「まあ、そうですが……」


 大村がそう返し、軽く息を吸い込んだ後、


「しばらく、我々も現場近辺を探ります。目撃証言や新たな証拠の収集などを地取りの班



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