労苦
「大村係長、今お留守番ですか?」


「ええ、捜査員が出払ってましてね。私以外、誰もいないんですよ」 


「お疲れのようですね」


「はい。この捜査本部がある限り、事件は終わらないわけですから」


 大村は刈り込んだ頭髪にだいぶ白髪が混じっている。


 苦労しているようだ。


 夜も眠れないのだろう。


 事件のことを考えていて。


 分かる気がした。


 所轄の刑事を束ねるのは大変だ。


 都道府県警本部のデカのように、整ってないからである。


 そういったことは承知していた。


 そして立ったままじゃなんだと思い、帳場の椅子に座って、大村と話を続ける。




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