労苦
「あんたら誰だ?」


 グレーのスーツを着た、五十がらみの、やや年配の刑事が声を掛けてきた。


 警察手帳を提示し、言う。


「警視庁捜査一課の梶間です」


 隣にいた橋村が、


「同じく橋村です」


 と言い、揃って軽く一礼した。


「本店のデカさんが来ても出番はないよ。この事件は殺しだけど、俺たち所轄だけで十分だ」


「亡くなった三原さんは現場に残っていた血痕から推測するに、何者かにより鈍器のようなもので後頭部を殴打され、脳挫傷で亡くなっています。犯行の手口は極めて悪質です。早くホシを逮捕しないと、第二第三の事件が起きかねません」


「まあ、そうだけど。……あんた頭で勝負するデカみたいだな?」


「ええ。長年、一課にいるものですから」
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