労苦
 そう推察するしかなかった。


 あやふやなままだ。


 何もかもが。


 まあ、それが人間社会の常なのだが……。


 気持ちを落ち着ける間もなく、連日捜査に出ていた。


 まるで猟に狩り出される犬のように。


 土曜も午前十時過ぎには警視庁本部庁舎を出、車に乗って南新宿へ向かう。


 問題はあの金庫を内田以外の誰が管理していたか、だ。


 ノブに複数名の指紋が付いていたなら、そう考えるしかない。


 いつも理詰めで思考する。


 そういった癖があるのだ。


 橋村もきっとそうだろう。


 コンビを組んでいるから、お互い性癖なり、思考パターンなりが似てくる。



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